SatoYuki-Yuki Sato's Law Blog-

Partner, Attorney at Law admitted in Japan and New York. My areas of practice include M&A, corporate laws, investment funds as well as capital markets.

マイナンバー法制度についてセミナーしました。

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5月12日(火)、13日(水)に、公認会計士協会東京会にてマイナンバー法についてお話ししてきました。一部が国税の方で、二部をより民間目線で、また法務面を加えて担当しました。2日間でトータル1000人位の方にご参加いただきました。

実際の講義内容は、一部の方との重複やご参加者の関心度を踏まえて、2日目を中心に資料から結構内容を変えてお話ししたのですが、ご参考まで。

来月以降、各種団体、法人からマイナンバー法関係のセミナー等のご依頼をいただいております。オフィシャルな発表から、会計ソフト会社さんのソフトウェアの対応状況などUPDATEすべきこともあるので、参考資料(①個人情報保護法上の規制との比較表と、②マイナンバーに関する業務の委託先との契約条項としてすぐに使える雛型を講義資料のほかに、お配りしています。)と合わせて、講義資料も充実させて臨みたいと思います。

www.slideshare.net

定型約款制度に関して

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民法改正案が3月31日付で国会に提出されました。今回の民法改正は、従前から議論されていた債権法改正の集大成であり、 実務に与える影響も少なくないものと思われます。今回は、多岐に渡る民法改正のうち、定型約款(民法改正案第548条の2以下)に関する取扱い(のごく一部)について取り上げたいと思います。定型約款とは、「定型取引において、契約の内容とすることを目的としてその特定の者により準備された条項の総体」(民法改正案第548条の2第1項)と、定型取引とは、「ある特定の者が不特定多数の者を相手方として行う取引であって、その内容の全部又は一部が画一的であることがその双方にとって合理的なもの」(民法改正案第548条の2第1項)と定義されています。 定型取引を行うことの合意をした者は、一定の場合(定型約款を契約の内容とする旨の合意をしたか、定型約款を準備した者があらかじめその定型約款を契約の内容とする旨を相手方に表示していた場合)、定型約款の個別の条項について合意をしたものとみなされます(民法改正案第548条の 2第1項)。現状広く用いられている約款の法的な位置付けをしたのが今回の定型約款制度と言えるでしょう。 もっとも、そもそも定型取引は、取引の「内容の全部又は一部が画一的であることが」双方に合理的なものとされており、画一的であることが不合理であり定型約款に該当しないと判断される約款も出てくる可能性があります(例えば、約款の内容を相手方との間で特約条項により相当程度変更する場合など。この場合は、契約内容自体は有効となれば実際上不利益はないかもしれませんが、それ以外の定型的約款に該当しないとされる場合に約款が無効として民法の規定に沿って解釈されることもあり得るのではないかと思います。)。また、画一的であることの合理性の判断要素は今後の実務の集積を待たなくてはならないように思われます。 なお、相手方の権利を制限し、義務を加重する条項で、定型取引の態様、実情、社会通念に照らし信義則に反するものは、契約内容と認められません(民法改正案第548条の2第2項)。信義則違反となる場合は、「消費者の利益を不当に害することとなる」 条項を無効とする消費者契約法上の概念と必ずしも一致するものではないこと、即ちいわゆるB to B取引における約款が無効とされる可能性がある点には注意が必要です。

内閣府令一部改正による「買付け等の通知書」実務への影響

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今月12日に平成26年金融商品取引法等改正(1年以内施行)等に係る政令・内閣府令案等に関して、パブコメの結果が公表されました。政令・内閣府令は、今月15日に公布され29日から施行される予定です。今回も多様な点が改正対象とされ実務に大きな影響を与えるとは思いますが、今日はちょっと渋い点を取り上げてみたいと思います。

今回、発行者以外の者による株券等の公開買付けの開示に関する内閣府令及び発行者による上場株券等の公開買付けの開示に関する内閣府令が一部改正され、公開買付者が公開買付けの終了後に応募株主に送付する「買付け等の通知書」において、各様式から公開買付者の「氏名又は名称」欄から押印の「印」部分が消えることになりました。

従前、「買付け等の通知書」については、この部分があること等から、各「買付け等の通知書」1通ごとに押印する必要があるように思われ、これを印鑑の印影を印刷して代用することが適法なのか問題となっていましたが、この論点がなくなることになります。1通ごとに押印するのは、実務的に不可能に近いため、疑義があるものの印刷して対応していたのが、(大手を振って?)押印しない形になることによって、変な疑義が生じないことになります。実務に合わせた改正と評価できるのではないかと思います。

イマジカ・ロボットホールディングスの自己株式の処分及び株式売出し

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イマジカ・ロボットホールディングス(イマジカ)の自己株式の処分及び株式売出しが昨年春に発表されました(http211.6.211.247/tdnet/data/20140404/140120140403032860.pdf)。イマジカといえば、本社屋が西部警察のロケで使われたことでも知られる、映像関連会社ですよね。イマジカの保有している自社株と、親会社である株式会社クレアート(クレアート、一昨年のイマジカの有価証券報告によればイマジカの62.57%を保有)が保有しているイマジカ株式を売り出しによって放出するようです。

イマジカの親会社
イマジカの親会社であるクレアート自体は未上場会社ですので、有価証券報告書等の提出されていないのですが、金融商品取引法に基づき親会社等状況報告書の提出が必要とされており、ある程度の開示がなされています。親会社等状況報告書によれば、クレアートの親会社は、株式会社クレアートホールディングス(クレアートHD)という会社で、クレアートHDの株主は、林原の会社更生でスポンサーになった長瀬産業の創業家一族です。株の保有関係は、個人→クレアートHD→クレアート→イマジカということになります。

旧イマジカとフォトロンの合併
現在のイマジカは実は以前フォトロンという名前の企業でした。フォトロン時代の資本関係は、個人→クレアートHD→クレアート→イマジカ・ロボットホールディングス(旧イマジカ)→フォトロンでした。2011年4月1日に親会社である旧イマジカがフォトロンに吸収される形で合併しました(http://www.imagicarobot.jp/news/2011/pdf/hd_20110401.pdf)。通常は、親会社が子会社を吸収合併するのですが、旧イマジカとフォトロンは、子会社であるフォトロンが存続会社となり親会社である旧イマジカが吸収され消滅するといういわゆる逆さ合併を行っています。この合併の時に、フォトロンは、吸収した親会社の商号に、商号変更しています。この逆さ合併は、いわゆる裏口上場(というと、悪いことのように聞こえてしまいますが)のためではないかと考えられます。上場子会社であるフォトロンが親会社旧イマジカに吸収合併される場合、フォトロンの上場は廃止になるのですが、逆にフォトロンの上場を維持したまま合併するためには親会社側が吸収され子会社の法人格を維持する必要がありました。この吸収合併により、上場しているフォトロン(現イマジカ)の株式を保有しているのがクレアートになりました。

いずれにしても、オーナー企業において自己株式の処分及び株式売出しが行われるとオーナーの議決権割合は低下するため、あまり事例としては多くないのですが、オーナー企業で有名なイマジカが自己株式の処分及び株式売出しを行うということで注目してみました。

株式会社タムロンによる株式会社宏友興産の買収及び合併

株式会社タムロンタムロン)による株式会社宏友興産(宏友)の買収(https://www.tamron.co.jp/investors/pdf/2015/0227.pdf)及び合併(https://www.tamron.co.jp/investors/pdf/2015/0415.pdf)のプレスリリースがありました。

この事案で気になったのは、宏友は、タムロンの創業者一族の資産管理会社であり、タムロン株を5.56%保有している会社である点です。創業家の資産管理会社を買収するのも珍しいですが、当該資産管理会社の保有している資産がタムロン株のみということから、事実上宏友株=タムロン株とみなして、会社法第156条第1項、第160条及び第161条の趣旨を踏まえて、自社株取得の手続きに準じた形で手続きを進めている点がi印象的です(具体的には、定時株主総会で宏友の株式取得に関して承認決議を取得しております。)。しかも、創業家の議決権を除き過半数を取得することを前提に手続きを進めている点は、かなり一般株主を尊重している感じがします。

上場株式を保有する目的の資産管理会社という点では、KDDIジュピターテレコム株式会社(ジュピターテレコム)の株式を取得するにあたって、ジュピターテレコムの株式を保有するSPCの持分を取得する形で、ジュピターテレコムに間接的に出資しようとした事案において、ジュピターテレコムの株式を保有しているSPCの持分を取得することがTOBの潜脱になるのではないかという論点が発生した事案を思い出しますが、タムロンは資産管理会社株式と保有上場株式の関係という極めて微妙な問題に対して慎重な対応をした点評価できるのではないでしょうか。

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株式会社ツルハホールディングス及び株式会社フジによる株式会社レデイ薬局へのTOB

ドラッグストア大手の株式会社ツルハホールディングス(ツルハ)とスーパーマーケット運営会社の株式会社フジ(フジ)は今月13日、ドラッグストアを展開する株式会社レデイ薬局(レデイ)に対して、TOB(株式公開買い付け)を実施する、と発表しました。 レデイは、上場会社ですが、既にフジが34.32%の株式を保有しておりフジの持分法適用会社になっています。

ツルハとフジは、TOBを2段階で実施してレデイの全株式の取得を目指すとのことです。第1段階は5月18日までに1株800円で買い付け、第2段階として7月13日までに1株1000円で買い付ける予定とのことです。なお、TOBを2回行うスキームは、旧ブログで取り上げた「M&A-スターバックス・コーヒー・ジャパンの完全子会社化(2段階TOB)」 で取り上げましたがかなり珍しいです(旭テック、スタバに続いて3例目かもしれません。)。第1段階のTOBは、創業家からの株式の取得を目指しているようでそのため、第2段階のTOBより200円安い形となっています。

2回のTOBを通して残った株式については、全部取得条項付種類株式にすることによってスクイーズアウトすることが予定されています。ツルハとフジによる全株式の取得後は、フジが49%、ツルハが51%を取得するとのことです。

今回のスキームが過去の旭テックやスタバと違う点は、TOBの主体が2社による共同買い付けとなっている点です。ツルハのプレスリリースには、

「本取引を通じて、公開買付者らは、対象者の非上場化並びに対象者に対するフジの議決権保有比率を 49%及びツルハHDの議決権保有比率を 51%とすることを目的としていることから、応募株券等の総数が買付予定数の下限(3,152,600 株)以上、3,163,958 株以下の場合には、応募株券等の総数の2分の1ずつ(ただし、端数が生じた場合には、フジの買付予定数についてはこれを切り上げるものとし、ツルハHDの買付予定数についてはこれを切り捨てるものとします。)をフジとツルハHDが それぞれ買付け等を行い、応募株券等の総数が 3,163,958 株を超えた場合には、応募株券等の総数のうち、1,581,979 株までについてはフジが買付け等を行い、それを超える数の応募株券等についてはその全てをツルハHDが買付け等を行います。」

といった割付け方の記載があり、2社による共同買い付けの特殊性が出ています。

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DCMホールディングス株式会社と株式会社サンワドーの株式交換

DCMホールディングス株式会社(DCM)による株式会社サンワドーサンワドー)の 簡易株式交換による完全子会社化に関する株式交換契約締結のお知らせ(http://www.sanwado.com/ir/ir_news/news150410.pdf)が出ていました。DCMは東証一部、サンワドーJASDAQ上場会社で、いずれも、ホームセンターなどを運営する会社です。

上場会社を子会社化する場合、いわゆる二段階買収、つまり①公開買付け(TOB)を行い、②親会社となる会社が子会社となる会社の議決権をある程度確保(9割が目処でしょうか)してから株主総会決議を経て、株式交換により完全親子会社化する、又は既に親子会社の関係にある会社が株式交換をして完全親子会社化することが多いように思います(もっとも、例えば親子上場しているが、すでに親会社がある程度議決権を有しているような場合は、株式交換だけで完全子会社化することもありますが。)今回は、親子上場といった事情はありませんが、株式交換の一回で上場廃止に持っていく予定という点で珍しいように思います。サンワドーは、上場会社とはいえ、オーナー企業でありオーナーとの間で”握れている”ためサンワドー株主総会での株式交換契約締結の承認も問題がないし、キャッシュをDCMとしては使いたくないためこういうスキームになったのでしょうか。

株式交換のためには原則として株主総会決議が必要となり、今回は、DCM側は簡易株式交換なので株主総会は不要ですが、サンワドー側は原則通り株主総会を行います。多くの場合、M&Aでは「臨時」株主総会を開催することになりますが、サンワドーは「定時」株主総会に合わせて株式交換契約の承認決議を行うことを予定しております。臨時株主総会の場合は、適時開示のあと基準日公告をすることが可能ですが、上場会社の場合、定時株主総会における基準日は定款で決まっているため、今回は、基準日の後に、株式交換する旨のプレスリリースが出るスケジュールとなっております。そのため、ややアンフレンドリーな感じがします。というのは、M&Aは会社のあり方に大きな影響を与える一大イベントですので、株式交換のプレスリリースが出てから、基準日までに株を売却するかどうか判断できる期間があったほうがより少数株主への配慮が感じられるというところです。

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ルーブル美術館の中です。