SatoYuki-Yuki Sato's Law Blog-

Partner, Attorney at Law admitted in Japan and New York. My areas of practice include M&A, corporate laws, investment funds as well as capital markets.

Vtuberが定時株主総会における計算書類の報告、事業報告の内容の報告をしたら

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先日、グリー株式会社が、2018年6月期第4四半期の決算説明会で子会社のWright Flyer Live Entertainment社のバーチャルYouTuberVTuber)「いそら真実(まなみ)」さんを登壇させ、冒頭5分ほどのエグゼクティブサマリ(FY18の実績、FY19事業方針の概要)を説明させたとのニュースが流れました(https://www.moguravr.com/gree-vtuber-earnings-announcement/)。

この調子ですと、Vtuber関連の上場会社であれば、定時株主総会における計算書類の報告、事業報告の内容の報告も、VTuberが行うという演出がなされるようになるかもしれませんね。

会社法では、事業報告の内容の報告に関して、同法第438条第3項で、「取締役は、第一項の規定により提出され、又は提供された事業報告の内容を定時株主総会に報告しなければならない。」とされており、また、計算書類の報告に関して、同法第439条第2文で、「取締役は、当該計算書類の内容を定時株主総会に報告しなければならない。」[1]とされており、これに従って、取締役が株主総会で報告を行うことになります。

この事業報告等は、伝統的には、議長が、株主総会の招集通知記載の内容をただ読み上げるという手法によりなされていましたが、もっとも、これでは、株主が眠くなってしまいます。近時では、株主総会をIR活動の一環として、会社の事業内容を十分に説明し、株主に理解してもらうべく、ビジュアル化が進んでいます。

株主総会白書 2017年版 -コード対応の定着から深化へ-(旬刊商事法務2151号・51頁、公益社団法人商事法務研究会)によれば、総会のビジュアル化実施状況は、実施していない会社が12.5%、実施している会社が約87.3%と9割近くに上るとされています。

ビジュアル化のうち、主なものとしては、スライド等を映写する方法(ナレーションを組み合わせることも)や、ビデオを上映する方法(ナレーションを組み合わせることも)が挙げられます。具体的には、「スライドまたはプロジェクターと合わせてナレーションを利用」している会社が全体の46.7%、「ビデオ上映と合わせてナレーションを実施」している会社が全体の14.2%となっています。ナレーションを組み合わせるというのは、議長が読み上げることによる議長の負担軽減になるとともに、ナレーターの方が声が聞き取りやすいといった事情もあるようです。但し、ナレーターの場合は直前に内容を変更することができないので、計画的に進めなければなりません。

Vtuberからの事業報告となると、まなみさんって誰!?何の権限で報告しているの!?というようにも思いますが、あくまで演出上のものであり、法的にはしっかり責任をもって取締役が報告しているということになります。法的には特段真新しい話ではないものの企業の特長を株主に伝える一つの手段となっていく可能性があるのではないかと思います[2]

なお、私が社外役員を務めているキャラクターを用いたプロモーションやブランディング施策などを行っている会社でも、株主総会では、代表的なキャラクターが事業報告を行っていて、キャラクターの声にちょっとびっくりしましたが、分かりやすくメリハリが利いた発表になっているように思います。

 

[1] 連結計算書類に関しては、会社法第444条第7項柱書第2文参照。

[2] 仮にグリーが定時株主総会でいそら真実さんに定時株主総会における計算書類の報告、事業報告の内容の報告をさせる場合、子会社のVtuberということなので、子会社に報告業務を業務委託するという立て付けになりますが、この辺りはプロのナレーターに業務を委託するのと同じになるかと思います。