社外高度人材に対するストックオプション税制の適用拡大とベンチャーキャピタル等の定義
法改正等については、基本的に事務所HP上のブログ(https://innovationlaw.jp/blog/)に回しているため、久しぶりになってしまいました。
経済産業省(「経産省」)が、社外高度人材に対するストックオプション税制の適用拡大(https://www.meti.go.jp/policy/newbusiness/stockoption.html)を公表しましたね。当該制度は、ストックオプション税制の適用対象者を、現行の社内の取締役及び従業員等から、高度な知識又は技能を有する社外の人材にまで拡大するもので、設立10年未満等の「一定の要件」を満たす株式会社が「社外高度人材活用新事業分野開拓計画」を策定し、主務大臣による認定を受けることで、当該計画に沿って行う新事業に従事する社外高度人材に対して付与するストックオプションについて、課税の繰り延べ等の税制優遇措置が適用されることになります。
「一定の要件」の中には、「ハンズオン支援を行う、ベンチャーキャピタル等から出資を受けていること。」という要件があり(https://www.meti.go.jp/policy/newbusiness/gaiyou_so.pdf)、ベンチャーキャピタル等とは、法律上どのように定義されているのか少し気になりましたので、改正法をちょっと見てみました。
中小企業等経営強化法第2条第8項では、「新事業活動に係る投資及び指導を新規中小企業者等に対して行うことを業とする者として経済産業省令で定める要件に該当する者から投資及び指導を受け、…新たな事業分野の開拓を図ること」を「社外高度人材活用新事業分野開拓」と新たに定義しております。この中の「新事業活動に係る投資及び指導を新規中小企業者等に対して行うことを業とする者として経済産業省令で定める要件に該当する者」というのがどうやらベンチャーキャピタル等を意味しているようです。では、経済産業省令=中小企業等経営強化法施行規則で定める要件はどうなっていますでしょうか。中小企業等経営強化法施行規則第3条では、
「法第2条第8項の投資及び指導を新規中小企業者等に対して行うことを業とする者として経済産業省令で定める要件に該当する者は、民法(明治29年法律第89号)第667条第1項に規定する組合契約によって成立する組合、商法(明治32年法律第48号)第535条に規定する匿名組合契約によって成立する匿名組合、投資事業有限責任組合(投資事業有限責任組合契約に関する法律(平成10年法律第90号)第2条第2項に規定する投資事業有限責任組合をいう。以下同じ。)若しくは有限責任事業組合(有限責任事業組合契約に関する法律(平成17年法律第40号)第2条に規定する有限責任事業組合をいう。)若しくは外国に所在するこれらの組合に類似する団体又は株式会社若しくは合同会社であって、新事業活動に対する資金供給その他の支援又は新事業活動に対する資金供給その他の支援を行う事業活動に対する資金供給その他の支援を行うものをいう。」
と定められており、一般的なファンド形態と「新事業活動に対する資金供給その他の支援」又は「新事業活動に対する資金供給その他の支援を行う事業活動に対する資金供給その他の支援」を行うことが定められており、いわゆるVCといって思い浮かべるような形態とさほど齟齬がないように思われます。今後、VCと契約書上言われたらこちらの条文を引用することになるのでしょうか。「おま、VC言っていたけど、違うじゃん」なんてファンドさん出てきたりして…。
ちなみに、「社外高度人材活用新事業分野開拓計画」(
また、社外高度人材として、
- 国家資格を有し、当該資格に関する3年以上の実務経験がある者
- 博士の学位を有し、研究、研究の指導、
教育に関する3年以上の実務経験がある者 - 上場会社の役員(取締役、会計参与、監査役、執行役)
として3年以上の実務経験 がある者
あたりが多そうです。社外高度人材活用新事業分野開拓計画を開始する日から遡った10
また、経験上、
さて、ストックオプション税制の適用拡大とは直接関係があるわけではありませんが、SOICOさん主催の「【経営者必見】ベンチャーの資金調達と効果的なインセンティブプランについてのセミナー」において「弁護士に聞く、資金調達の実務と投資契約書の論点」ということで少しお話をさせていただく機会を頂戴しました。ご興味あれば是非ご参加いただければと思います。今回の適用範囲の拡大に関しても土岐さんパートで少し触れられるかもしれませんし、パネルディスカッション後の懇親会でも結構話題になるかもしれません。
セミナーのURLは以下のとおりです。
https://venturelaw.peatix.com/