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SatoYuki-Yuki Sato's Law Blog-

Partner, Attorney at Law admitted in Japan and New York. My areas of practice include M&A, corporate laws, investment funds as well as capital markets.

株式会社セブン&アイ・ホールディングスによる株式会社ニッセンホールディングスの完全子会社化

M&A

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今月2日に、株式会社セブン&アイ・ホールディングス(「7&iHD」)による株式会社ニッセンホールディングス(「ニッセン」)の完全子会社化が発表されました(http://www.7andi.com/dbps_data/_material_/localhost/ja/release_pdf/20160802_01.pdf)。

今回の完全子会社化は株式交換によりますが、この結果、ニッセンが7&iHDの直接の完全子会社になるのではなく、7&iHDの孫会社(7&iHDの完全子会社である株式会社セブン&アイ・ネットメディアの完全子会社)となります。一般的に、株式交換の対価として完全親会社となる会社(今回で言えば株式会社セブン&アイ・メディア)の株式が、完全子会社となる会社(今回で言えばニッセン)の株主に渡されることになり、完全子会社となる会社の既存の株主は完全親会社となる会社の株主にその立場を変えることになります。今回は株式交換の対価として、ニッセンの株主に、株式会社セブン&アイ・メディアの株式ではなくその親会社である7&iHDの株式が渡された点が特徴といえるでしょう[1]

プレスリリースによりますと、三角株式交換を採用した理由は、

「本株式交換の目的を実現するとともに、株式交換完全子会社であるニッセンホールディング スの株主の皆様に対して割り当てられる株式交換の対価の流動性を確保し、ニッセンホールディングスの株主の皆様に対し本株式交換によるシナジーの利益を提供するとの観点から、本株式交換については、いわゆる「三角株式交換」の方法によるものとし、本株式交換の対価としては、セブン&アイ・ ネットメディアの株式ではなく、セブン&アイ・ネットメディアの完全親会社であるセブン&アイ・ ホールディングスの普通株式を割り当てることといたします。」

とのことです。

ところで、我が国の会社法上、株式交換の対価は、完全親会社となる会社から渡される必要があります。そのため、株式会社セブン&アイ・メディアが一旦7&iHDの株式を保有している必要がありますが、我が国の会社法では、子会社による親会社株式の取得は原則として禁止されています(会社法第135条第1項)。そこで、三角株式交換を可能とするために、会社法第135条第1項の例外として、株式交換等の対価に用いるための親会社株式の取得を許している会社法第800条第1項[2]を根拠として、株式会社セブン&アイ・メディアは7&iHDの株式を今回の株式交換のために市場から調達をしています。つまり、株式交換を利用し現金ではなく株式を完全子会社となる会社の株主に渡しているものの金銭の出損を伴っている点が三角株式交換の特徴的と言えそうです。プレスリリース上も以下のような記載がなされております。

セブン&アイ・ネットメディアは、本株式交換により交付するセブン&アイ・ホールディ ングスの普通株式については、平成28年8月3日~同年8月31 日の期間において、514,300株を上限として、株式市場からの買付けにより、取得する予定です。なお、当該セブン&アイ・ホールディングス普通株式の取得については、平成 26 年4月1日に日本取引所自主規制法人が公表した「自己株式取得に関するガイドライン」に準じた手続により、買付けを行うことを予定しております。また、その取得資金は、セブン&アイ・ホールディングスの完全子会社である株式会社セブン&アイ・フィナンシャルセンターからの借入れにより調達 する予定です。」

 なお、7&iHDの株式を市場から取得するための資金源は、兄弟会社(株式会社セブン&アイ・フィナンシャルセンター)からの借入しております。

(追記)

9月14日に、三菱ケミカルHDの完全子会社である三菱化学と日本化成との間で三菱ケミカルHD株を交換対価とする三角株式交換のプレスリリースがありました(http://www.mitsubishichem-hd.co.jp/news_release/pdf/00459/00519.pdf)。三角株式交換を採用した理由は、

「本株式交換の目的を実現するとともに、(i) 非上場企業である三菱化学普通株式を対価とした 場合には、日本化成の少数株主の皆様が流動性の低い株式を取得することになること、(ii) 現金ではなく、 三菱ケミカルホールディングス普通株式を対価として交付することにより、日本化成の少数株主の皆様に 本株式交換によるシナジーの共有機会を提供できること、(iii) 三菱ケミカルホールディングスグループと して、三菱ケミカルホールディングス及び三菱化学間の 100%親子会社の関係を維持する必要性があること 等を勘案し、本株式交換の対価としては、三菱化学の株式ではなく、三菱化学の完全親会社である三菱ケミ カルホールディングスの普通株式を割り当てることといたします。」

 とのことです。また、三菱化学が親会社である三菱ケミカルHDの普通株式を取得する方法は、決定次第別途公表とのことです。

[1] このスキームは、いわゆる三角株式交換と呼ばれます。

[2] 「第百三十五条第一項の規定にかかわらず、吸収合併消滅株式会社若しくは株式交換完全子会社の株主、吸収合併消滅持分会社の社員又は吸収分割会社(以下この項において「消滅会社等の株主等」という。)に対して交付する金銭等の全部又は一部が存続株式会社等の親会社株式(同条第一項に規定する親会社株式をいう。以下この条において同じ。)である場合には、当該存続株式会社等は、吸収合併等に際して消滅会社等の株主等に対して交付する当該親会社株式の総数を超えない範囲において当該親会社株式を取得することができる。」とされています。今回で言えば、株式交換完全子会社の株主がニッセンの株主に該当し、存続株式会社等が株式会社セブン&アイ・ネットメディアに該当し、親会社株式が7&iHDの株式に該当します。