SatoYuki-Yuki Sato's Law Blog-

Partner, Attorney at Law admitted in Japan and New York. My areas of practice include M&A, corporate laws, investment funds as well as capital markets.

上場会社による転換権付優先株式の発行が募集に該当するとされた事例

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昨年もいろいろなニュースがありましたが、今日はこれを取り上げたいと思います。

グローバルアジアホールディングス株式会社(「GAHD」、ちなみにいろいろ名前を変えている会社だったりしますね…)の優先株式による第三者割当増資が、無届けの募集に該当するおそれがあると認められたことから、昨年8月7日に関東財務局からGAHDに対して警告書が出され(http://www.fsa.go.jp/news/27/sonota/20150807-3.html)、GAHDが第三者割当増資を中止したことがありました。

上場会社が、優先株式普通株式と別途発行する場合、有価証券届出書ではなく臨時報告書の提出で足りるのが原則である点は実務上よく知られた話ですが、その例外に該当する実例が出たわけです。警告書には具体的な理由は書いてないので推測ですが、企業内容等の開示に関する留意事項について(企業内容等開示ガイドライン)Ⅲ「株券等発行に係る第三者割当」の記載に関する取扱いガイドライン(1)審査対象 ④において、

「法第24条第1項各号のいずれかに該当する株券(以下④において「有報提出対象株券」という。)についての取得請求権が付されている種類株券が第三者割当により発行される場合であって、割当予定先又は発行体等の自由な裁量等により、短期間に有報提出対象株券の発行が相当程度見込まれるものについては、法第2条第3項第2号ハに規定する「多数のものに譲渡されるおそれが少ないもの」には該当しないものと考えられる。よって、今回、第三者割当の開示内容が改正されたことに鑑み、このような種類株券の取得勧誘について、臨時報告書を提出し、有価証券届出書の提出を回避しようとする者については、法令違反に該当する可能性があることから、有価証券届出書の必要性について入念に審査することに留意する。」

とされていることから、GAHDの優先株式が「割当予定先又は発行体等の自由な裁量等により、短期間に有報提出対象株券の発行が相当程度見込まれるもの」と判断されたものと考えられます。ちなみに、GAHDの優先株式は、転換権行使が発行から1年3ヶ月経過で無条件に可能であり、確かに1年3ヶ月は転換権行使不可の期間としては短い印象があります。

ちなみにGAHDは、内部管理体制に問題がある等により、その後上場廃止となっています。