SatoYuki-Yuki Sato's Law Blog-

Partner, Attorney at Law admitted in Japan and New York. My areas of practice include M&A, corporate laws, investment funds as well as capital markets.

いわゆるプロ向けファンドに関する金商法の改正について

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お久しぶりです。今日は、巷で騒がれている適格機関投資家等特例業務(プロ向けファンドと呼ぶ人もいます)について。

1. 今回の改正の経緯をおさらい

適格機関投資家等特例業務について、念のためおさらいすると、組合型ファンド(日本の投資事業有限責任組合民法上の組合、海外のLimited Partnershipなど)は、①その持分の取得勧誘(自己募集/私募)と、②組合財産の運用(自己運用)について、それぞれ第二種金融商品取引業投資運用業登録が必要なところ、適格機関投資家等を対象とするものについては、それぞれ登録ではなく届出(金商法63条)で足りるというものでした。「適格機関投資家」というのは、例えば、銀行、証券会社などの第一種金融商品取引業、有価証券残高が10億円といったプロがありますが、適格機関投資家「等」は、これに準じるものではなく、適格機関投資家以外の投資家を差し、49名以下の者であればOKとなっています(ただし、適格機関投資家以外の者から出資を受けている匿名組合営業者やSPCなど、一定の除外要件はあります)。

制度が整備されたのは、前述の①自己運用、②自己募集について原則として業登録が必要となった2007年の金商法成立からでした。近時、この制度を悪用する業者がいると指摘され、投資家の要件を厳格化する必要性が唱えられていました。つまり、適格機関投資家になって名前貸しをするような業者もいますので、そういう業者に頼んで適格機関投資家になってもらえば、適格機関投資家以外の投資家(49名以下であれば、例えば投資経験が乏しい個人に対しても)へアプローチして取得勧誘することができるわけです。

昨年、証券取引等監視委員会の建議及び消費者委員会の提言を受けて、特例業務に係る投資家要件を見直す政令・内閣府令案が公表されたこと、これに対して、独立系ベンチャーキャピタル有志等から反対意見が出されたことと、結局昨年8 月1 日に施行が予定されていた改正政令・内閣府令案の施行が見送られた経緯を覚えている方もいらっしゃるかと思います。その後、「投資運用等に関するワーキング・グループ」の審議を経て、今回の金商法、関連政令・内閣府令改正と至ったわけです。

2. 改正の概要

平成27年金商法と政省令の改正では、①適格機関投資家等の範囲の改正、②拒否要件の新設、③届出書への記載事項や添付書類の追加、④(登録金商業者向けの)行為規制の適用、⑤行政処分の対象化などがあります。と、プロ向けファンドの大きな改正になるわけですが、入口部分①についてまず見ていきたいと思います。

若干省略もありますが、主なものは以下のとおりです。 

改正前

改正後

適格機関投資家

適格機関投資家

適格機関投資家以外の者(49名以下、50人以上の適格機関投資家以外の者が保有することがないよう転売制限付き)

適格機関投資家以外の者であって、以下のいずれかの者(49名以下、50人以上の適格機関投資家以外の者が保有することがないよう転売制限付き)

① 国

② 日本銀行

③ 地方公共団体

④ 金融商品取引業者、登録金融機関

⑤ ファンド資産等運用業者(いわゆる自己募集(正確には私募)と自己運用を業として行う者)

⑥ (i)⑤の役員、従業員、(ii)⑤の親会社等、子会社等、(iii)⑤の運用委託先、(iv)⑤へ投資助言を行う者、(vi)(ii)~(iv)の役員、従業員、(v)⑤と(i)(iii)の親族

⑦ 上場会社

⑧ 資本金の額が5000万円以上の法人

⑨ 純資産額5000万円以上の法人

⑩ 特別の法律により特別の設立行為をもつて設立された法人

⑪ 特定目的会社

⑫ 資産100億円以上の企業年金基金

⑬ 外国法人

⑭ 資産1 億円以上かつ証券口座開設後1 年を経過した個人(業務執行組合員として保有する場合も)

⑮ 公益社団法人

⑯ 資産100億円以上の存続厚生年金基金

⑰ 資産100億円以上の外国の年金基金

⑱ 資産1億円以上の法人(業務執行組合員として保有する場合も)

⑲ ④⑦⑧⑨の子会社等又は関連会社等

⑳ 一定の資産管理会社

㉑ 一定の外国籍組合型ファンドの発行者

 

【一定のベンチャーキャピタルについては以下の者も追加】

(1) 上場会社の役員

(2) 資本金又は純資産額が5000万円以上の法人で有価証券報告書提出会社の役員

(3) 組合型ファンドの業務執行組合員(法人の場合)の役員

(4) 5年以内に(1)~(3)のいずれかに該当していた者

(5) 5年以内に(4)(5)に該当する者として、同じ発行者が発行する組合型ファンド持分を取得した者

(6) 5年以内に組合型ファンドの業務執行組合員だった者(法人の場合)

(7) 役員、従業員、業務委託先として、会社設立、一定の資金調達、新事業活動、合併等、新規上場、経営戦略策定等に通算1年以上関与して5年以内の者

(8) 有価証券届出書、有価証券報告書において、5年以内に、10位までの株主だった者

(9) 認定経営革新等支援機関

(10) (1)~(9)の個人が議決権の50%以上を保有している会社等(さらに子会社等と関連会社等も)と、議決権の20-50%以上を保有している会社等

ベンチャーキャピタルの場合については、結構幅広に拾われていますね。例えば、私も少なくとも(7)には入るのではないかと思います、笑。

3. 既存の業者についての経過措置

既に適格機関投資家等特例業務の届出を出して業務を行っている者についての経過措置については、これから確定することになります。

http://www.fsa.go.jp/news/27/syouken/20151120-3.html

但し、施行日より6か月以内に、「平成27年改正金商法、政令・内閣府令により追加された届出事項・添付書類を提出する必要」があるとされているので注意が必要です。今後このブログにも記載したいと思います。