SatoYuki-Yuki Sato's Law Blog-

Partner, Attorney at Law admitted in Japan and New York. My areas of practice include M&A, corporate laws, investment funds as well as capital markets.

不正競争防止法の改正とセミナーのご案内

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本日は、M&Aや海外の法律ネタではなく、不正競争防止法の改正について書いておきたいと思います。営業秘密漏えいとして思いつくのは、どのようなものでしょうか?新日鉄住金の高機能鋼板に関する情報が韓国企業のポスコに流出した事件、東芝NAND型フラッシュメモリーの情報が提携先企業の従業員経由で韓国企業のSKハイニックスに流出した事件、あるいはベネッセの個人情報が委託先企業の従業員により名簿業者に売却された事件などでしょうか。ご存じのとおり、前二者のような技術情報はもちろんのこと、個人情報(顧客情報)まで、営業秘密に該当しうるわけです(秘密として管理されているといった営業秘密に該当するための3要件はありますが)から、営業秘密を持っていない企業というのはむしろ少数派でしょう。営業秘密漏えいに関する不正競争防止法の改正は、企業の業種、規模などを問わず要チェックです。

不正競争防止法の改正

ここでは全てを取り上げることはできませんが、例えば、刑事罰については罰金の上限が引き上げられ、個人については、1000万⇒2000万、法人については3億⇒5億となっています。また、営業秘密を不正に取得した者から当該営業秘密を取得した者(例えば競合他社や名簿業者など)も独立した類型として処罰対象となりうることになります(以前は、共犯にならない限りは処罰対象ではありませんでした)。

METIの資料2枚目では、米国の刑事罰、懲役の長さ、罰金の高さが目を引くところです。

また、営業秘密が国外へ持ち出された場合には捕捉することは難しい、また我が国の基幹産業において競争力の喪失のおそれがある等の理由から、日本国外における使用目的で営業秘密を不正に取得した者などに、2000万⇒3000万、法人は5億円⇒10億円と刑罰の上限を引き上げ重罰化がなされます。

民事責任についても、営業秘密の不正使用行為に関する推定規定が導入され、(1)生産方法又は一定の技術上の秘密(政令により定められます)について、(2)相手方が営業秘密を不正に、又は悪意若しくは重過失で取得し、(3)自社の技術を用いて生産できるものを生産しているか営業秘密を利用していることが明らかな行為(これも政令により定められます)があれば、不正使用行為が推定されることになります。また、⑥除籍期間が10年⇒20年に延長されることになります。

施行時期は、公布された2015年7月10日から6ヵ月以内に政令で定める日です(通常は6ヵ月。)

セミナーのご案内

ちょっと駆け足になってしまいましたが、ここで、営業秘密に関連してセミナー等を2件告知させていただきます(笑)。

営業秘密や著作権、商標等の訴訟に関するセミナー(事務所主催)

弁護士法人苗村法律事務所参画時より一緒にやっている苗村弁護士、田中弁護士と当職で、営業秘密や著作権、商標等の訴訟に関するセミナーを開催致します(東京は10月13日と20日、大阪は8日と19日)。うちには訴訟になるほどのものはないよ~というご認識の方も多いと思いますが、訴訟での立証活動を知ってこそそこから逆算してより良い社内体制を作ることができます。ぜひご参加いただければと思います。少人数セミナーでして、各日とも2~5席のみの空きですが(本日朝の時点で)ご興味ある方はお問い合わせください。

営業秘密に関するフォーラム(一般社団法人オープンイノベーション促進協議会の公認フォーラム「知財の泉」主催)

また、東大先端研の玉井克哉教授が主宰される、一般社団法人オープンイノベーション促進協議会の公認フォーラム「知財の泉」では、次回10月21日(水)18時半より営業秘密に関するフォーラムを開催致します(本年は営業秘密に関するテーマを取り扱う予定です)。当職も運営協力等行っております。オープンイノベーションという用語にあるように、適度にオープンな環境かつ双方向(別に当てられるわけではありませんが)な環境で行っております。こちらもご興味がある方はお問い合わせください。