SatoYuki-Yuki Sato's Law Blog-

Partner, Attorney at Law admitted in Japan and New York. My areas of practice include M&A, corporate laws, investment funds as well as capital markets.

増進会出版社による栄光ホールディングスの完全子会社化

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先日、増進会出版社Z会)による栄光ホールディングス(栄光)の完全子会社化のプレスリリースが発表されました。少子高齢化のなか、進学塾等の教育業界での統合がまた進みましたね。私も高校時代Z会をやっていたような気がします。

今回ちょっと注目すべきは、Z会による栄光に対する公開買付けの前に、栄光は自社株買いを行い、筆頭株主である進学会ホールディングス(進学会)が株主からいなくなることが想定されているという点です。

このような、第1段階:対象会社による自社株公開買付け、第2段階:買収者による他社株公開買付けといったスキームは(私の知る限り)初めてなのではないかと思います(自社株公開買付けと他社株公開買付けを同時に行うケースはあります。)。第1段階も第2段階も買収者による公開買付けというケースは幾つかすでに存在し、ブログでも取り上げたことがありますが、今回のスキームは、この亜種という見方もできるかもしれません。もっとも、企業の買収にあたって、ターゲットとなる企業が自らの剰余金を利用して自社株買いをすることによって、買収者の買収を助けるという点では、色々と問題となっているアムスクの事案を想像させます(この点は、アムスクの事案のように不特定多数からの株式取得を目的とする自社株公開買付け1回ではなく、その後に他社株公開買付け(かつ自社株公開買付けよりも高い価格)が行われることによって問題は低減されているという判断ができると思いますし、そうだからこそアドバイザーもこのスキームに関与できたのだとは思います。)。この点、今回のプレスリリースでは、何故このようなスキームになったのか理由が以下のとおり書かれています。

増進会出版社は、進学会ホールディングスとの間で、平成 27 年3月中旬に行われた面談において増進会出版社による公開買付けのみを実施するストラクチャーや対象者による自己株式の公開買付けを実施するストラクチャーを含めて提案を行い、また、その後、上記のとおり対象者との協議も踏まえつつ、公開買付けの価格等の条件を提案(対象者株式1株当たりの買付け等の価格として、 増進会出版社による公開買付けについては 1,400円程度、対象者による自己株式の公開買付けについては時価)の上、慎重に協議、交渉を行った結果、進学会ホールディングスから、対象者と増進会出版社資本提携の強化の目的及びその合理性について理解を得るに至りました。その結果、進学会ホールディングスとしては、同社における事情(公開買付者は、かかる事情の具体的な内容について把握していません。)を勘案した結果として、平成 27 年4月 17 日に、増進会出版社による公開買付けのみを実施する場合には、これに応募の確約はできないものの、対象者株式1株当たりの買付け等の価格を 1,450 円(以下「本自己株買付価格」といいます。)とする本自己株公開買付けが実施されれば、これに応募する用意がある旨が確認できました。」

とされており、Z会や栄光がどうしたかったというよりも、進学会側の意向に沿った形でスキームを練ったという点が指摘されています。

税務は専門でないのですが…、進学会が何故栄光による自社株取得には応じるとしたのか記載はありませんが、自社株公開買付けに応じた株主は一定の範囲でみなし配当課税の適用があり、法人の場合受取配当等の益金不算入の規定の適用を受けることができるためなのかもしれません。