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SatoYuki-Yuki Sato's Law Blog-

Partner, Attorney at Law admitted in Japan and New York. My areas of practice include M&A, corporate laws, investment funds as well as capital markets.

M&Aと女性の職業生活における活躍の推進に関する法律

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「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年4月1日法律第64号)(「活躍推進法」)が2016年4月1日から全面施行されています。今日は、この法律がM&Aに与え(てい)る影響について一言。

活躍推進法第8条第1項に基づき、常時雇用する労働者が300人を超える企業は、「一般事業主行動計画」を定め厚生労働大臣に届出をすることが義務づけられています[1]。また、「一般事業主行動計画」を変更する場合も、同様に厚生労働大臣に届け出なければなりません。そもそも、この義務が課せられている企業のうちどの程度の企業が遵守しているのかわかりませんがあくまで遵守されていることを前提に考えてみたいと思います。

M&A実行時においては、当該義務が履行されているのかどうかチェックすることも、法務Due Diligenceの対象となってくると思いますが、M&A後のいわゆるPost Merger Integration(PMI)においても影響があるように思います。以下、合併、事業譲渡・会社分割及び子会社の売却の場合に分けて検討します。

法務部門がアラートして人事部門で対応する、PMIのためのプロジェクトチームがハンドルする等各社によって異なりますが、まだ新しい手続きですので、漏れがないようにしていただければと思います。

合併の場合

例えば、常時雇用する労働者の数が300名未満のA社と、常時雇用する労働者の数が300名未満のB社が合併をする場合、両社の常時雇用する労働者の数が合併によって300名を超えるときは、合併により新たに「一般事業主行動計画」の届出義務が生じることになるので、合併が決まった後、当該義務を遵守すべく、A社とB社と共同で一般事業主行動計画を策定するためのプロジェクトチームを造ることが考えらえます。

他方、既に「一般事業主行動計画」を届け出ているA社が、B社と合併しA社が存続会社となる場合[2]、当該行動計画の前提となる「採用した労働者に占める女性労働者の割合、男女の継続勤務年数の差異、労働時間の状況、管理的地位にある労働者に占める女性労働者の割合その他のその事業における女性の職業生活における活躍に関する状況を把握し、女性の職業生活における活躍を推進するために改善すべき事情」(活躍推進法第8条第3項)が異なることから、届け出ている一般事業主行動計画を変更することが望ましいのではないでしょうか。また、仮に、B社も一般事業主行動計画を策定している場合は、事前に両行動計画をすり合わせておくことも考えられます。

事業譲渡・会社分割の場合

常時雇用する労働者の数が300名以上であり、既に「一般事業主行動計画」を届け出ているA社が、事業譲渡や会社分割により、常時雇用する労働者の数が減少した場合、「一般事業主行動計画」の前提が異なってくることにより行動計画の目標の達成の見込みがなくなることも考えられます。このようなときは、事業譲渡や会社分割後、一般事業主行動計画を変更することが必要となってくるものと思われます。他方、事業譲渡で事業を譲り受けた会社や吸収分割会社が、常時雇用する労働者の数が300名以上となった場合は、合併の場合と同様、一般事業主行動計画を新たに策定し届け出る必要が出てきます。

子会社の売却の場合

「一般事業主」とは、企業グループ全体ではなく、各法人ごとに考えるのが原則のようです(厚生労働省の「状況把握、情報公表、認定基準等における解釈事項について」[3]問33参照)。そのため、一般的には、子会社の売却によって、当該義務がただちに問題になることはありません。もっとも、問33によれば、「グループ内で雇用管理が一体的になされている場合[4]など一定の場合は、グループ全体としての実施=各事業主の実施と解することができる。」とされており、例えば、A社がこれに従い、子会社B社を含める形で一般事業主行動計画を定めている場合は、B社が売却されたときは、一般事業主行動計画の目標の達成の見込みがなくなることも考えられます。その場合は、一般事業主行動計画を変更することが必要となるでしょう。また、もしB社を譲り受けたC社がグループ全体として一般事業主行動計画を定めていた場合、こちらも当該一般事業主行動計画の前提が異なってくることから、行動計画の変更をすることが考えられます[5]

 

[1] 常時雇用する労働者が300人未満の場合であっても、同条第7項において一般事業主行動計画の届出が努力義務となっています。

[2] 他方、一般事業主行動計画が届出済の会社が合併消滅会社となる場合、どのような手続きが必要かは必ずしも法律上明確ではありません。

[3] http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11900000-Koyoukintoujidoukateikyoku/kaishakujikou_4.pdf

[4] 「グループ内の雇用管理が一体的になされている」とは、 採用から配置・育成、登用に至るまでをグループ全体で行っていることを意味すると状況把握、情報公表、認定基準等における解釈事項について問33で記載されている。

[5] 子会社譲渡により一般事業主行動計画の対象外となった労働者に関して対象外となったことにより何らかの不利益が生じた場合は、労働法制に従い不利益変更の妥当性が問題になることも考えられることから、一般事業主行動計画の対象外となった労働者に対してどのような対応をするのかはM&A検討時に検討しておく必要があるものと考えます。

移籍の御報告

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御報告が遅くなりましたが、今月から、King & Wood Mallesons法律事務所・外国法共同事業という法律事務所へパートナーとして移籍しました。

M&A、資金調達からベンチャー支援まで、これまで行ってきた業務は引き続き力を入れ、またクロスボーダー取引において強みを発揮できると思います。初心にかえり、頑張りたいと思います!

ちなみに、King & Wood Mallesons(http://www.kwm.com/en/)は、アジア太平洋、欧州、北米、中東地域の16か国にオフィスをもつインターナショナルファームです。これまで日本では、金杜外国法事務弁護士事務所として日本企業のアウトバウンド投資などのサービスを提供していましたが、今般、私を含む5人の弁護士が参加し、King & Wood Mallesons法律事務所・外国法共同事業として、日本法のサービスも提供できる体制として新たなスタートを切ることになりました。

採用活動中ですので、もし周りにアジアを中心に世界で活躍したい弁護士さんがいらっしゃったら、ご連絡ください!

秋のベンチャー企業及びVC向け無料法律相談やります。

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ベンチャー企業及びベンチャー・キャピタル向け無料法律相談を実施します。今回は、ベンチャー企業については、M&A、資本業務提携及び資金調達関連のご相談を、ベンチャー・キャピタルについては、ファンド関連契約及び金商法の適格機関投資家特例業務関係のご相談(事業報告書、プロ成り書面その他金商法上の書面作成を含みます。)を対象とさせていただきます。

実施期間は、11月22日(火)から11月28日(月)の1週間です(ただし、土・日・祝日は除きます。)。予約制となりますので、ご希望の方は、弁護士佐藤有紀(info.tokyo@namura-law.jp) 宛に下記のフォームに従ってメールでご連絡下さい。虎ノ門又は丸の内にお越しいただく形となります。ご相談は、30分から1時間程度の面談による相談とさせていただきます。 

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1.会社名及び氏名:

2.住所:

3.電話番号:

4.会社及び業務の概要(ごく簡単にで結構です):

5.相談の概要:

6.相談希望日時(なるべく幅を持たせて下さい):

 

第1希望:

第2希望:

第3希望:

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We will have a free legal consultation for start-ups on M&A, capital alliance and equity/debt financing and venture capitals on a fund documentation and necessary documents to be filed with the FSA/ to be provided to investors under the Financial Instruments and Exchange Act from 22nd to 28th day of November (excluding 23rd, a national holiday of Japan).  For booking, please contact Yuki Sato at info.tokyo@namura-law.jp with the information below. You will have 30min to 60min at my office in Toranomon or Marunouchi. Sorry but we do not provide e-mail or telephone consultation on legal matters.

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1.Company name and your name:

2.Address:

3.Tel:

4.Outline of your business:

5.Your question/concern:

6.Preferred dates and times:

 

First choice:

Second choice:

Third choice:

For those who are interested in expanding their Japan business through M&A, please also refer to my power point slides.

www.slideshare.net

SGXにおける複数議決権株式の上場

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本日は複数議決権株式(通常は1株あたり1個の議決権が与えられるが、複数の議決権が与えられる場合)について取り上げてみたいと思います。日本の会社法では、種類株の1つとしての複数議決権株式は認められていません。

この点シンガポールでは、今年1月のシンガポール会社法の改正によって、1株1議決権とする規制が排除され複数議決権が認められました。これを受けて、シンガポール証券取引所(SGX)のThe Listings Advisory Committee (“LAC”)は、いわゆるDual Class share (DCS)structuresの上場に賛成する旨を表明しました(http://www.sgx.com/wps/wcm/connect/b9f773a8-d2b0-4920-8466-6bf021df5332/SGX+Listing+Advisory+Committee+Report+FY2016.pdf?MOD=AJPERES&CACHEID=b9f773a8-d2b0-4920-8466-6bf021df5332)。

DCS structuresでは、例えばA種株式1株には1議決権を与え、B種株式1株には2議決権を与えるようなストラクチャーが考えられます。この場合、創業者はB種株式を保有し、一般株主にはA種株式を募集・売出することによって、相対的に少ない投資額で会社の支配権を維持する形にすることができます。

もっとも、DCS structuresを何らの制限もなく設計することができるようにすると一般株主の利益を害する恐れがあることから、LACは、SGXがDCS structuresを認めるとしても、上場申請を行う会社について、業種、サイズ、事業運営の実績、sophisticated investorsからの資金調達等の要素を含め総合的な評価を行うこととしています。

また、議決権の集中・固定化を最小化するため、以下のような制限を加えることを示唆しています。

  1.  1株あたりの議決権数の差が最大10倍までとする。
  2.  上場後の各種類株式の割合を変更することとなる複数議決権株の増資を禁止する。また、現状1株1議決権となっている会社がDCS structuresとなるような増資は禁止する。
  3.  創業者等による複数議決権株の売却、役員からの退任等の一定の条件により自動的に普通株式に転換する仕組みを入れる。

また、少数株主を害して会社から利益を不当に得る事態を防ぐため、

  1.  取締役会、指名委員会、報酬委員会及び監査委員会について、取締役会の独立や委員会設置に関するコーポレートガバナンスコードに従うこと
  2.  普通株主が独立取締役を選ぶ場合、複数議決権株主が議決権を行使できない仕組みとすること

を求めています。

さらに、DCS structuresを採用する場合の、株主の権利がどのようなものであるか等の情報開示の徹底が求められます。これによって、一般株主の利益にも配慮しているわけです。SGXはDCS structure採用により、より多くのhigh-quality companyのSGXでの上場につながると考えているとのことです。今後DCS structureを使った会社が上場することになるのか見守りたいと思います。

あと、話変わりますが、先日米国向けに日本でのM&Aに関するセミナーをしましたが、その時のスライドをSlide Shareに入れておりますのでよろしくお願い申し上げます。

www.slideshare.net

会社分割に伴う労働契約の承継等に関する法律施行規則等の改正等

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本日は、本年9月1日から施行された、M&A(会社分割、事業譲渡、合併)における労働契約のあり方について定めた、「会社分割に伴う労働契約の承継等に関する法律施行規則」(「承継法施行規則」)等の改正等について概説します。

 1. 承継法施行規則等の改正等

会社によるM&Aは、会社の事業規模の拡大、新規事業分野への進出等々の目的でなされますが、労働者側からすると雇用関係に与える影響が少なくないため、これまで、労働関連法令に加えて、会社分割においては「会社分割に伴う労働契約の承継に関する法律」(「承継法」)及び「分割会社及び承継会社等が講ずべき当該分割会社が締結している労働契約及び労働協約の承継に関する措置の適切な実施を図るための指針」(「承継法指針」)により、労働者保護のための必要な手続き等が定められています。

今般、会社法等の法整備の状況や、組織の変動にかかる裁判例の蓄積等を踏まえ、労働者保護の観点から一定の対処が必要な事項が生じているとした、組織の変動に伴う労働関係に関する対応方策検討会報告書(http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000121228.pdf)が出され、これを踏まえ、承継法施行規則や承継法指針が改正され今月1日から施行、適用されています。

また、事業譲渡及び合併については、上記報告書の内容を踏まえ、会社が留意すべき事項を示した事業譲渡又は合併を行うに当たって会社等が留意すべき事項に関する指針(「事業譲渡等指針」)が新たに策定され、今月1日から適用が始まっています。

2. 改正等内容

(1)   承継法施行規則の改正

会社分割の際の労働者への通知事項(施行規則第1条)として、労働者の労働契約が承継会社等(承継会社及び新設会社)に承継される場合には、労働条件はそのまま維持されることを通知することが盛り込まれました(同第1条第2号)。

(2)   承継法指針の改正

従前、承継される事業に主として従事する労働者との労働契約を会社分割によって承継会社に承継させるのではなく、いわゆる転籍合意に基づき承継会社に転籍させる場合には、承継法で定められた通知(承継法第2条)や、労働契約が承継されないことへの異議申立手続(承継法第4条)等が法律の文言上は適用されない形となっていました(転籍によって、承継法上の手続を取らないケースも相当数あったのではないかと思います。)。 

今般、このような転籍による場合にも、承継法上の通知や、商法等改正法附則第5条で義務付けられた協議等の手続きは省略できないことが承継法指針上明文化されました。

なお、承継される事業に主として従事する労働者が、分割会社との労働契約を維持したまま、承継会社等との間で新たに労働契約を締結し出向する場合でも、通知及び協議等の手続が必要であることも明文化されました。

また、商法等改正法附則第5条の協議等の対象となる労働者として、承継される事業に従事していない労働者であって分割契約等にそのものが当該分割会社との間で締結している労働契約を承継会社等が承継する旨の定めのあるものも含まれることとなりました。なお、当該協議の内容として、効力発生日以後における分割会社及び承継会社等の債務の履行の見込みに関する事項も含まれることとなりました。

そして、承継される事業に主として従事する労働者に対して、分割契約等に承継会社等が当該労働者の労働契約を承継する旨の定めがある場合には、分割会社との間で締結している労働契約は、分割会社から承継会社等に包括的に承継されるため、その内容である労働条件はそのまま維持されること、及び当該労働者の労働契約を承継する旨の定めがない場合には、承継法第4条第1項の異議の申出をすることができることを当該労働者に対して説明することが求められることとなりました。これに対して、当該労働者が分割契約等に承継会社等が当該労働者の労働契約を承継する旨の定めのないことにつき、承継法第4条第1項の異議の申出をした場合には、同条第4項の規定に基づき、当該労働者が分割会社との間で締結している労働契約がその内容である労働条件を維持したまま承継会社等に承継されることとなり、これに反する転籍部分は、無効となることを留意するよう明文化されました。

これ以外に、企業年金の取扱いについてもかなり詳細な説明がなされています。

(3)   事業譲渡等指針の新設

会社が、事業譲渡を行い、当該事業に従事する労働者の労働契約を事業譲渡先に承継させようとする場合、契約上の地位の譲渡ということになりますので、労働者の個別の承諾が必要となります。事業譲渡等指針は、この労働者の承諾を得る上での事前の協議等を経て適切に行うよう、会社が留意すべき事項が定められました。

これにより、労働承継を伴う事業譲渡のとき手続き的にチェックすることが増えましたのでアドバイザーとしても留意が必要かと思います。

株式会社セブン&アイ・ホールディングスによる株式会社ニッセンホールディングスの完全子会社化

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今月2日に、株式会社セブン&アイ・ホールディングス(「7&iHD」)による株式会社ニッセンホールディングス(「ニッセン」)の完全子会社化が発表されました(http://www.7andi.com/dbps_data/_material_/localhost/ja/release_pdf/20160802_01.pdf)。

今回の完全子会社化は株式交換によりますが、この結果、ニッセンが7&iHDの直接の完全子会社になるのではなく、7&iHDの孫会社(7&iHDの完全子会社である株式会社セブン&アイ・ネットメディアの完全子会社)となります。一般的に、株式交換の対価として完全親会社となる会社(今回で言えば株式会社セブン&アイ・メディア)の株式が、完全子会社となる会社(今回で言えばニッセン)の株主に渡されることになり、完全子会社となる会社の既存の株主は完全親会社となる会社の株主にその立場を変えることになります。今回は株式交換の対価として、ニッセンの株主に、株式会社セブン&アイ・メディアの株式ではなくその親会社である7&iHDの株式が渡された点が特徴といえるでしょう[1]

プレスリリースによりますと、三角株式交換を採用した理由は、

「本株式交換の目的を実現するとともに、株式交換完全子会社であるニッセンホールディング スの株主の皆様に対して割り当てられる株式交換の対価の流動性を確保し、ニッセンホールディングスの株主の皆様に対し本株式交換によるシナジーの利益を提供するとの観点から、本株式交換については、いわゆる「三角株式交換」の方法によるものとし、本株式交換の対価としては、セブン&アイ・ ネットメディアの株式ではなく、セブン&アイ・ネットメディアの完全親会社であるセブン&アイ・ ホールディングスの普通株式を割り当てることといたします。」

とのことです。

ところで、我が国の会社法上、株式交換の対価は、完全親会社となる会社から渡される必要があります。そのため、株式会社セブン&アイ・メディアが一旦7&iHDの株式を保有している必要がありますが、我が国の会社法では、子会社による親会社株式の取得は原則として禁止されています(会社法第135条第1項)。そこで、三角株式交換を可能とするために、会社法第135条第1項の例外として、株式交換等の対価に用いるための親会社株式の取得を許している会社法第800条第1項[2]を根拠として、株式会社セブン&アイ・メディアは7&iHDの株式を今回の株式交換のために市場から調達をしています。つまり、株式交換を利用し現金ではなく株式を完全子会社となる会社の株主に渡しているものの金銭の出損を伴っている点が三角株式交換の特徴的と言えそうです。プレスリリース上も以下のような記載がなされております。

セブン&アイ・ネットメディアは、本株式交換により交付するセブン&アイ・ホールディ ングスの普通株式については、平成28年8月3日~同年8月31 日の期間において、514,300株を上限として、株式市場からの買付けにより、取得する予定です。なお、当該セブン&アイ・ホールディングス普通株式の取得については、平成 26 年4月1日に日本取引所自主規制法人が公表した「自己株式取得に関するガイドライン」に準じた手続により、買付けを行うことを予定しております。また、その取得資金は、セブン&アイ・ホールディングスの完全子会社である株式会社セブン&アイ・フィナンシャルセンターからの借入れにより調達 する予定です。」

 なお、7&iHDの株式を市場から取得するための資金源は、兄弟会社(株式会社セブン&アイ・フィナンシャルセンター)からの借入しております。

(追記)

9月14日に、三菱ケミカルHDの完全子会社である三菱化学と日本化成との間で三菱ケミカルHD株を交換対価とする三角株式交換のプレスリリースがありました(http://www.mitsubishichem-hd.co.jp/news_release/pdf/00459/00519.pdf)。三角株式交換を採用した理由は、

「本株式交換の目的を実現するとともに、(i) 非上場企業である三菱化学普通株式を対価とした 場合には、日本化成の少数株主の皆様が流動性の低い株式を取得することになること、(ii) 現金ではなく、 三菱ケミカルホールディングス普通株式を対価として交付することにより、日本化成の少数株主の皆様に 本株式交換によるシナジーの共有機会を提供できること、(iii) 三菱ケミカルホールディングスグループと して、三菱ケミカルホールディングス及び三菱化学間の 100%親子会社の関係を維持する必要性があること 等を勘案し、本株式交換の対価としては、三菱化学の株式ではなく、三菱化学の完全親会社である三菱ケミ カルホールディングスの普通株式を割り当てることといたします。」

 とのことです。また、三菱化学が親会社である三菱ケミカルHDの普通株式を取得する方法は、決定次第別途公表とのことです。

[1] このスキームは、いわゆる三角株式交換と呼ばれます。

[2] 「第百三十五条第一項の規定にかかわらず、吸収合併消滅株式会社若しくは株式交換完全子会社の株主、吸収合併消滅持分会社の社員又は吸収分割会社(以下この項において「消滅会社等の株主等」という。)に対して交付する金銭等の全部又は一部が存続株式会社等の親会社株式(同条第一項に規定する親会社株式をいう。以下この条において同じ。)である場合には、当該存続株式会社等は、吸収合併等に際して消滅会社等の株主等に対して交付する当該親会社株式の総数を超えない範囲において当該親会社株式を取得することができる。」とされています。今回で言えば、株式交換完全子会社の株主がニッセンの株主に該当し、存続株式会社等が株式会社セブン&アイ・ネットメディアに該当し、親会社株式が7&iHDの株式に該当します。

最高裁平成28年7月1日決定(株式取得価格決定に対する抗告許可決定に対する許可抗告事件)について

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最高裁平成28年7月1日決定(株式取得価格決定に対する抗告許可決定に対する許可抗告事件。以下「本決定」といいます。)が7月4日に公表されました。本決定は、上場廃止を目的とするMBOや上場子会社の完全子会社化を目的とするいわゆる二段階買収[1]が採られる際の全部取得条項付種類株式の取得の価格の決定に関する最高裁の判断であり、実務にも大きな影響を与えるものと思われます。

平成26年会社法改正前においては、MBOや上場子会社の完全子会社化を行う場合、①公開買付けを行った後、②普通株式を全部取得条項付種類株式に変更し、全部取得条項を行使し公開買付けに応じなかった少数株主に対して対価として金銭を交付することにより少数株主をスクイーズ・アウトする手法が一般的に採用されていました。

本決定は、この②で行われる全部取得条項付種類株式の取得価格が①で行われる公開買付けによる買付価格(以下「公開買付価格」といいます。)と同額であるのに対して、少数株主が会社法第172条第1項に基づき[2]取得価格の決定の申し立てをした事案に対する最高裁としての判断です。

原審は、公開買付け公表時においては、公開買付価格は公正な価格であったと認められるものの、その後の各種の株価指数が上昇傾向にあったことなどからすると、取得日までの市場全体の株価の動向を考慮した補正をするなどして全部取得条項付種類株式の取得価格を算定すべきであり、第1段階の公開買付価格を取得価格として採用することはできないとしました(結論として、公開買付価格は12万3,000円であったのに対し、取得価格として13万0206円としました)。

これに対して、最高裁は、「多数株主が株式会社の株式等の公開買付けを行い、その後に当該株式会社の株式を全部取得条項付種類株式とし、当該株式会社が同株式の全部を取得する取引において、独立した第三者委員会や専門家の意見を聴くなど多数株主等と少数株主との間の利益相反関係の存在により意思決定過程が恣意的になることを排除するための措置が講じられ、公開買付けに応募しなかった株主の保有する上記株式も公開買付けに係る買付け等の価格と同額で取得する旨が明示されているなど一般に公正と認められる手続により上記公開買付けが行われ、その後に当該株式会社が上記買付け等の価格と同額で全部取得条項付種類株式を取得した場合には、上記取引の基礎となった事情に予期しない変動が生じたと認めるに足りる特段の事情がない限り、裁判所は、上記株式の取得価格を上記買付けにおける買付け等の価格と同額とするのが相当である。」と判断しました。

最高裁としては、(1)会社の意思決定過程の恣意性を排除する措置が講じられており、(2)第1段階の公開買付価格と第2段階における取得価格が同額である旨が公開買付届出書や適時開示資料によって開示されている場合、原則として、第1段階の公開買付けによる買付価格と第2段階における取得価格が同額であることが相当としています。理由としては、上場廃止を目的とするいわゆるMBOや上場子会社の完全子会社化といったディールにおいては、第1段階の公開買付価格は「全部取得条項付種類株式の取得日までの期間はある程度予測可能」であり、取得日までに生ずる株式取引市場の「一般的な価格変動についても織り込んだ上で定められている」ことが挙げられています。

MBOや上場子会社の完全子会社化といったディールでは、多数株主又は会社と少数株主の間に利益相反関係が存在することになりますが、本決定によれば、独立した第三者委員会や弁護士等の専門家の意見を聴くなど公開買付け(とそれに続く少数株主のスクイーズ・アウト)の過程・手続が公正であれば、裁判所が実体的に価格を算定することは行わずに公開買付価格と同額であることをもって相当とするという立場最高裁が採用したものと評価することができるでしょう。今後は、少数株主による会社法第172条第1項に基づく取得価格の決定の申し立てが行われる可能性は低くなったのではないかと思われます。

もっとも、本決定はあくまで、全部取得付条項種類株式に関する会社法第172条第1項の取得価格の決定についての判断であり、平成26年会社法改正後においてスクイーズ・アウトの手段として利用されるようになった株式併合や特別支配株主による株式等売渡請求における価格決定の申立においても、本決定と同様の判断がなされるかは別途の検討が必要である点を付け加えさせていただきます。

 

[1] 第一段階として公開買付けを行い第二段階として公開買付けに応じなかった株主をスクイーズ・アウトすること

[2] ①全部取得条項付株式の取得に反対する旨を会社に通知しかつ株主総会において反対した株主及び②議決権を行使することができない株主は、取得日の20日前の日から取得日の前日までの間に、裁判所に対し、取得の価格の決定の申立てをすることができるとされます(会社法第172条第1項)。